赤ちゃんは課長代理 第1話
暮れも押し迫って来て、社内の雰囲気も
段々と慌しさを増して来ていると言うのに
独りだけ、のんびりとしている課長、いや
課長代理がいた、彼の名前は加藤俊34歳
某人材派遣会社の人事課のデスクで今日も
クロスワードに集中していた・・
「加藤代理~、暇ですか?」
<声を掛けたのは入社5年目の久美だった>
「暇ぁ?失礼な!もう少しで全部のマスが
埋まるとこだよ、邪魔しないでくれよっ」
久美(まったくもうっ、専務の甥だから
良かったけど、本当ならとっくに
あんたなんかクビよ!)
久美は〔桂川久美28歳独女〕入社3年目に
して、営業部のチームリーダーに抜擢された
実力と人望がある、キャリアウーマンだった。
彼女も社内ではほとんど後輩のフォロー専門で
動いていたので、ある意味この二人はどちらも
暇と言えば、暇な毎日を会社で過ごしていた。
「加藤さん、やる事が無いなら、新しい取引先に
提出する、派遣さんのファイルの整理とかぁ
タイムカードの作成とか、ネームプレートやら
とにかく、手伝って下さいよ~、せっかく
うちのチームの子が契約してきたんだからぁ」
<加藤は、おもむろに右手を、久美の前に差し
出してから、一指し指をくい、くいとさせた>
「な、なんですか?それ、何かの合図ですか?」
「ほらぁ、ご褒美は?今夜なんかしてくれるの?」
(もう、頭に来た!今夜覚悟なさい・・)
「もう結構です!独りでやるから・・
その代わり、そこの会議室かりますからねっ」
(最近甘やかし過ぎた、私が悪かったかもね?
今夜は一から、躾け直してやらなくっちゃね)
二人は4年前の社員旅行で
近場の温泉に行った時、たまたま
くじ引きで、同じバスでしかも隣同士になった
1泊2日の短い旅行だったが、久美は・・
行きがけのバスの中で、彼の得意分野だった
販売心理学を延々と語られた、もちろん最初は
とても、うっとうしく感じていたが、徐々に
彼の語り口調に嵌って行き
温泉から帰った後も営業ノウハウや
マーケティングを教わる為に
何度も部屋に通う事になった
当然久美も男性の部屋に入ること自体に
警戒心を持たなかった訳ではなかったが
彼の何気ない仕草や態度が何処となく
可愛らしく感じ、いつのまにか
彼に惹かれて行った・・・
それからは、彼の部屋へ会社から
直接向かう日も週に3回以上になったが
一度も彼は私の手でさえも触れる事はなかった
4年前・・
付き合って5ヶ月目のある日・・・
「ねぇ、俊・・今夜も泊まってもかまわない?
今日はお泊りセットも持ってきたの・・」
<そう言って、久美はわざとバックの中身を俊に
見せて、バックの手前に目立つように置いて
おいた、コンドームを見せ付けた>
「うん、全然いいよ~、それじゃ僕、お風呂の
お掃除してくるねっ、食事は頼むね~」
(何よ、このホモ!私に魅力がないてぇ~の)
久美は学生時代は、ずっとバレー部で慣らしていた
その、鍛え抜かれた肉体と、さらに中学時代には
学園ドラマの子役オーデションにも最終選考まで
残った程の容姿だった・・・ただひとつだけ
自分でもコンプレックスに感じていたのは、175
センチの高い身長だけだった。
(今夜は絶対に、キスまではいくわよっ)
当然、この頃はまだ久美は
彼のある性癖に気が付いてはいなかった・・・